ゲームデザインの勉強をするために、そのゲームの持つ面白さを言語化する、という修行に取り組んできました。
その中で、ふとゲームデザインの歴史について気になった部分があったので、そちらもまとめておきたいと思います。
なお、全てChat-GPT調べとなっておりますので、あらかじめご了承ください。
テキスト型アドベンチャーの、黎明期から現代までの進化をたどりながら、それぞれの時代を象徴するタイトルとその特徴が分かる
1976年、史上初のテキストアドベンチャーゲームと広く認められる 『Colossal Cave Adventure』(通称「Adventure」)が大型計算機(PDP-10)上で公開。
このゲームは、洞窟探検家でプログラマーのウィル・クロウザー(Will Crowther)が実体験をもとに制作し、のちにドン・ウッズ(Don Woods)がファンタジー要素を追加拡張して生まれました。
文章による空間と情景の描写に対し、プレイヤーが「動詞+名詞」の短いコマンドを入力して探索やパズル解決を行う内容で、
例えば
「go west(西へ行く)」
「get lamp(ランプを取る)」
のような一語または二語のコマンドで洞窟内を移動し、アイテムを集めて謎を解くというもの。
コンピュータに対して自分の言葉で命令を入力し、その結果が逐一文章で返ってくるというインタラクティブな体験は、当時の人々にとって非常に新鮮で刺激的なものだったと思われる。
実際、1970年代後半にはコンピュータを扱えた限られたコミュニティの中で本作は大人気となり、様々な派生や移植版が作られた。
こうした盛り上がりに触発されて、1977年にMITの学生らが**『Zork』**という新たな大規模テキストアドベンチャーの開発を開始。
ZorkはAdventureのゲーム性を踏襲しつつ、より強力なコマンド解釈エンジン(パーサー)と言語処理を目指して制作されました。
巨大な地下帝国を舞台にしたZorkは、完成度の高さから評判となり、ARPANET経由でユーザーが存在を知ってプレイするなど、当時の計算機ネットワーク上で密かに広まり始めました。
1970年代末までに、テキストベースのアドベンチャーゲームは、コンピュータ文化の一角を成すジャンルとして芽吹いたのである。
1980年代に入ると、テキストアドベンチャーゲームはパーソナルコンピュータで花開き、商業的な黄金時代を迎える。
そう、ファミコンが発売されたあの時代である。
1979年設立のインフォコム(Infocom)社は、先述のZork開発メンバーを中心に、テキストアドベンチャー専門のゲーム会社としてスタート。
Infocomはまず大型機向けだった『Zork』をパソコンに移植し、『Zork I』(1980年)として発売する。
Zork Iはたちまちヒットし、1983年から85年にかけてPCゲーム売上のトップを獲得、1986年までに単体で38万本、三部作合計で68万本を売り上げる大成功を収めた。
この成功により、同社は1980年代を通じて数多くの高品質なテキストアドベンチャーを世に送り出していく。
技術面では、インフォコムは独自のゲーム記述言語ZILとZ-machineと呼ばれる仮想マシン技術を用いていた。
ゲームをバイトコード化し共通インタプリタで動作させることで、Apple II、IBM PC、Commodore 64など当時の主要な家庭用コンピュータすべてにソフトを容易に移植できたのである。
また、各ゲームに組み込まれた**パーサー(文解析エンジン)**は非常に洗練されており、1970年代のAdventureのような「動詞+名詞」程度の簡単な命令だけでなく「オブジェクトを指定してから別の動作を続ける」といった複文さえ解釈できた。
例えば「open the large door, then go west(大きな扉を開けてから西に行く)」のように一度に複数の行動を入力できるなど、当時としては画期的な対話性であった。
プレイヤーはキーボードで指示を入力し、ゲーム内の世界を探索する。
Infocomの作品群は、**『Zork』シリーズだけでなく、SFやミステリ、コメディなど多彩なジャンルに広がった。
たとえば、密室殺人事件を扱った推理ゲーム『Deadline』(1982年)では、ゲーム内時間の経過とともに登場人物が行動するという画期的な手法を導入し、プレイヤーは探偵となって証拠集めと推理を行うのである。
また、ダグラス・アダムス原作の『The Hitchhiker’s Guide to the Galaxy』(銀河ヒッチハイクガイド, 1984年)は原作小説のユーモアを取り入れた、難解ながらもユニークなSFアドベンチャーとしてベストセラーになり、テキストゲームの存在を一般層にも広めた。
Infocomは、他にもSF大作『A Mind Forever Voyaging』(1985年)でゲームを通じた社会風刺に挑戦している。
ゲームパッケージには、作中アイテムを模した付録(いわゆる「フィールズ」)が同梱され、プレイヤーは地図や手紙といった小道具を手に実際に謎解きをしているかのような没入感を味わえるという仕組みであった。
プレイヤーコミュニティもこの時代に形成され始め、Infocom社はファン向けニュースレターを発行し、ユーザー有志によるZork Users Group(ZUG)**が非公式のヒント集やマップを配布するなどの盛り上がりを見せています。
(Infocom社が最初にコミュニティの大事さに気づいたのかも)
しかし、1980年代後半になると、パソコンの性能向上に伴いグラフィカルなアドベンチャーゲームが台頭し始める。
1984年に登場した『キングス・クエスト』を皮切りに、キャラクターや背景をグラフィックで表示しポイント&クリックで操作するアドベンチャーが人気を集め、文章だけのゲームは次第に市場の中心ではなくなっていった。
実際、Infocom内部でも1982年頃にはグラフィック導入の議論がありましたが、デザイナーたちは文章による想像力の喚起にこだわりを見せ、最終的にはテキストオンリー路線を貫いたとされている。
その結果、商業的には他社のグラフィックアドベンチャー(例えば米国ではSierra社やLucasfilm Games社の作品)が主流となり、テキストアドベンチャーは売上を落としていった。
Infocom社は1989年に親会社Activisionによって閉鎖され、1980年代を通じて約40本に及んだ同社のテキストアドベンチャー黄金期は幕を下ろす。
以降、テキストベースのゲームは大手メーカーから姿を消し、一時は「過去の遺産」とみなされるようになった。
1990年代に入ると、商業市場から消えたテキストアドベンチャーは**インタラクティブフィクション(IF)と呼ばれるジャンルとして愛好家たちに受け継がれていく。
インターネット黎明期でもあったこの時代。
パソコン通信やネットニュースグループ上にテキストアドベンチャー愛好者のコミュニティが形成され、過去の名作を語り継ぐとともに自作のテキストゲームを配布・プレイする文化が生まれた。
(ここから始まったのか)
1993年、イギリスのプログラマ、グレアム・ネルソン(Graham Nelson)はInfocomのZ-machine向けゲームが作成できるツール「Inform」を発表し、自らそのデモンストレーションとして大作IF『Curses』を公開します。
これに刺激される形で、趣味のゲーム作家たちが増え、以降インターネットを通じて多数のフリーのテキストアドベンチャーが発表されるようになった。
1995年には有志主催のインタラクティブフィクション・コンペティション(IFコンプ)**が初めて開催され、世界中のIF作者が短編作品を競う年次イベントが始まる。
このIFコンペは現在まで毎年続く伝統となり、新人作者の登竜門として機能している。
さらに1996年からはコミュニティによる年間優秀作表彰「XYZZYアワード」も創設。
商業作品が途絶えた後も、インタラクティブフィクション文化は、インターネット上で着実に発展している。
こうしたコミュニティから生まれた作品の中でも、特に**『Photopia』(フォトピア, 1998年)**はIF史に残る傑作として知られている。
Adam Cadreによるこの短編インタラクティブフィクションは、ほとんど謎解き要素を持たず、物語体験に重きを置いた内容で、プレイヤーはほぼ一本道のストーリーを追体験することになる。
それまでのテキストアドベンチャーがパズルや得点を重視していたのに対し、『Photopia』は分岐の幻影こそ与えつつ、結末は変わらないという大胆な構成を取り、インタラクティブ性よりも物語の伝達力を優先したのである。
この革新的手法はコミュニティ内で高く評価され、同作は1998年のIFコンペで優勝。
『Photopia』以降、パズルの難易度ではなく、ストーリーのテーマ性や文学性で勝負するインタラクティブフィクションが増えていった。
作者の個人的な体験や、社会問題を題材にした意欲作も現れ、IFは単なる娯楽ゲームから表現メディアへと変貌を遂げたのである。
実際、『Photopia』は後年の投票で「史上最高のインタラクティブフィクション」に選ばれるなど、多大な影響を与えた。
1990年代末までに、テキストアドベンチャーは「レトロゲーム」の陰に隠れつつも、熱心なクリエイターとプレイヤーによる独自の進化を続けていたと言える。
2000年代に入ると、インタラクティブフィクションは、インターネット上のオープンな創作コミュニティによってさらに多様な発展を遂げる。
無償公開のゲームエンジンや開発ツールが次々と登場し、専門的なプログラミング知識がなくても作品を作れる環境が整っていきました。
たとえば2006年に公開されたInform 7は、英語の文章に近い記述で、ゲームロジックを定義できる画期的なシステムで、プログラマーでない作家志望者にも門戸を開いた。
さらに2009年にはクリス・クライマス(Chris Klimas)が、**「Twine」を発表。
Twineは、Webブラウザ上で動作するオープンソースのシナリオエディタで、リンクをクリックして物語を分岐させるハイパーテキスト型**のインタラクティブフィクションを簡単に制作できるツールであった。
直感的なビジュアル画面で、ストーリーの分岐構造を作図でき、コーディング不要で物語ゲームを書けることから、従来のIFコミュニティとは異なる層のクリエイターを多数取り込んだ。
Twineの登場以降、個人のブログや、同人ゲームの延長で作られた短編IFがネット上に急増し、テーマも作者の私的体験を綴ったものや実験的詩的作品など、より多彩になっていく。
特に2010年代前半には、Twine製の物語ゲームがインディーゲームの一ジャンルとして注目されるようになった。
パーサー入力型の伝統的IFも、この時期に洗練を極めていく。
コミュニティでは、引き続き毎年数十本規模の新作が発表され、作品の質も向上していった。
ベテラン作者たちは、物語体験を向上させる様々な工夫を凝らしていく。
例えば、
・高度な自然言語処理で、プレイヤーの入力ストレスを軽減する
・ゲーム内でヒント機能を提供する
・UIにグラフィカル要素を取り入れる
などである。
また、協働執筆プラットフォームの普及により、オンラインで複数人が共同制作するインタラクティブフィクションも見られるようになった。
コミュニティそのものも進化し、ブログやフォーラム、Wikiなどでノウハウやソースコードが共有され、オープンソース精神に支えられた創作の輪が広がった。
このように2000年代のIFシーンは、商業市場とは独立した形で成熟期を迎え、ゲームジャムや、作品レビューを通じて、愛好者同士が切磋琢磨する文化が定着した。
クリエイター・プレイヤー双方の情熱によって支えられたIFコミュニティは、ニッチながら**「テキストによる物語体験」という芸術形式**を守り抜き、次の時代への橋渡しをしていったのである。
スマートフォンの普及した2010年代には、テキストアドベンチャーゲームが新たな形で脚光を浴びるようになりる。
タッチスクリーンや、通知機能といった、モバイル機器特有のインターフェースを活かし、現代のカジュアルユーザーにも訴求する革新的なテキストゲームが登場する。
中でも象徴的なのが、イングランドのインクル社(inkle)が手がけた**『80 Days』(80デイズ, 2014年)である。
ジュール・ヴェルヌの小説『80日間世界一周』が原案。
プレイヤーが主人公フォッグ氏の従者となって世界旅行に挑む物語であるが、その特徴は洗練された文章と、無数の分岐シナリオにありる。
スマートフォン/iPad向けに開発された本作は、地図上の経路選択や、所持金管理などの要素を持ちながらも、本質的にはテキストで展開するインタラクティブフィクションとして設計されている。
物語の各場面で、頻繁に小さな選択肢が提示され、その積み重ねによって旅路が多方向に分岐していくというストーリーレット(storylet)**方式を採用している。
これによって、テキスト主体ながらも、スピーディーで没入感の高いゲームプレイを実現した。
『80 Days』は往年のテキストアドベンチャーを現代のプラットフォームとユーザーに合わせて再発明した作品として高い評価を受け、タイム誌の2014年ベストゲームリストでトップ10に選ばれただけでなく、英国の有力紙Telegraphから「2014年の優れた小説の一つ」とまで評された。
ゲームでありながら、文学作品としても賞賛されるなど、その物語性は文化的なインパクトを与えている。
スマートフォンならではのインターフェースを活用した作品としては、『Lifeline』(ライフライン, 2015年)も特筆に値する。
このゲームは遭難した宇宙飛行士と無線で交信する、という設定のテキストアドベンチャーで、プレイヤーはまるでチャットアプリでメッセージのやり取りをするような形で物語に参加するのである。
主人公から一方的に届くメッセージ(文章)を読み、その都度2択の返信を選ぶことでストーリーが分岐していく、というチャット小説形式をゲーム化したもの。
最大の特徴はリアルタイム性で、プレイヤーが指示を出すと物語内で主人公が行動を開始し、実際に数分~数時間の待ち時間をおいてから次のメッセージが届くという仕組みになっている。
例えば
「これから谷を下りて基地を探す」
と主人公が告げてきたら、現実でもしばらく待たないと、次の進展が報告されないのである。
このようにゲーム時間と現実時間を同期させる手法と、スマホのプッシュ通知で進行を伝える設計によって、あたかも本当に宇宙飛行士と通信しているかのような没入感が生まれた。
『Lifeline』はApple Watchにも対応した手軽さも功を奏し、全世界で数百万ものユーザーにプレイされるヒット作となった。
テキストメッセージという身近な形態を通じ、インタラクティブフィクションの新たな可能性を示した作品と言える。
また、近年では有名IPを題材にしたスマホ向けテキストゲームも登場している。
例えば2020年にはHBOの人気ドラマ原作による 『Game of Thrones: Tale of Crows』 がApple Arcade向けに配信された。
夜勤警備隊(ナイツウォッチ)を題材に、要塞を管理し探検隊を派遣するというストラテジー風の要素を備えつつ、基本的な進行はテキストによる物語選択で展開されというもの。
プレイヤーが方針を指示するとゲームを閉じている間も探検が進行し、異変が起こればスマホの通知で知らせが来るという放置系・リアルタイム進行型のデザインが特徴。
プレイヤーは自分のペースで物語の断片に対応し、選択を積み重ねて何世代にもわたる物語を紡いでいく。
高品質なビジュアルやサウンドも相まって、テキスト主体ながらも、リッチな世界観への没入を実現した例として注目された。
このようにスマートフォン時代の作品群は、テキストアドベンチャーの基本である「文章による想像力喚起」を活かしつつ、現代のデバイス機能や、ユーザー習慣に合わせた新しい遊び方を提案している。
さらに2010年代後半以降、テキストアドベンチャーは他ジャンルとの融合や最新技術の取り込みも進んでいる。
選択肢ベースの物語ゲームを多数配信するChoice of GamesやEpisodeといったサービスは若年層にも人気を博し、テキストと簡易なイラストで、ロマンスやファンタジー物語を手軽に楽しめるプラットフォームとして定着した。
2019年には**『AI Dungeon』**のように、人工知能(GPT系言語モデル)を用いて、プレイヤーの入力に応じた無限のテキスト展開を可能にする実験的なゲームも登場している。
この作品ではプレイヤーのどんな文章入力にもAIが即興で物語を続けてくれるため、文字通り自由度無限大の冒険が楽しめる。
AI技術の進歩により、物語生成の自動化や、インタラクティブ性の強化といった新境地にもチャレンジが始まっているのである。
現在、テキストアドベンチャー/インタラクティブフィクションは一部の愛好者に支えられつつも、依然として健在です。古典的なパーサーIFも毎年新作が作られ続けており、オンライン上のIFコミュニティ(フォーラムやDiscordなど)では、作品の感想や技術情報が活発に交換されている。
一方でスマホゲームとしてのテキストADVは、インディーゲームの一つのカテゴリとして定着し、物語体験を重視するユーザー層に支持されている。
ゲームブックやビジュアルノベルとも異なる独自の魅力。
すなわち**「文章を読むゲーム」**という体験の面白さ――は、時代と技術を超えて、なお受け継がれているのである。
1970年代に端を発したこのジャンルは、50年近くにわたり、形を変えながら存続し続け、今なお新しい物語が書き加えられている。
まとめ
各時代の代表作を通じて見てきたように、テキストベースアドベンチャーゲームは技術やプラットフォームの進化に合わせて形を変えながら発展してきた。
コマンド入力からハイパーテキスト、そしてスマホでのリアルタイム対話型物語へとインタラクション手法は変遷しましたが、
「文字で綴られた物語世界に読者を引き込み、選択を通じて物語を体験させる」
という本質的な魅力は一貫して受け継がれている。
その文化的影響も、黎明期には計算機科学者やホビイストに衝撃を与え、黄金期には多くのゲームファンを熱中させ、現在では、文学とゲームの垣根を越えた評価を受けるまでに至った。
テキストアドベンチャーゲームの歴史は、インタラクティブな物語表現の可能性を切り拓いてきた軌跡にもなっている。
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